説明
かつて手作業で大量生産された、白磁のご飯茶碗です。産地は不明ですが、瀬戸(愛知県)もしくは有田(佐賀県)と思われます。大正ごろに、細かな模様を食器に転写できるようになり、多色顔料も使われるようになったため、一般家庭向きの食器もカラフルになりました。この茶碗は線画、青、緑、茶、グレー、朱の吹付と最低でも6工程で描かれており、当時としても贅沢なものだったと思われます。反面、象の絵の反対側の朱色が大きくはがれているのを補修して焼き直した跡があり、当時の価値観として、B品であっても使用可能なら流通させる習慣も見てとれます。(戦後まで、B品を補修して安価に卸す「ペケヤ」という業者が存在しました。また、戦前戦後にはB品であっても通常ルートで流通していました。)
戦前、「象」は子供たちに非常に人気のある動物で、東京の上野動物園に大正14年(1925年)に「ジョン」「トンキー」、昭和10年(1935年)に「花子」が到着し、大評判となりました。これらが、のち戦時殺処分される「かわいそうなぞう」の象で、この茶碗に描かれている子供たちのアイドルとしての姿を見ると、複雑な心境を抱かざるを得ません。
この商品は未使用新品のデッドストックです。製造から90年程度経過しているため、底部分に擦れ等があります。写真の通り、表面の顔料に大きく補修した跡や色ムラがありますが製造時点のものです。使用には差し支えありませんが、歴史上の資料とお考えください。代品がないため返品や交換はお受けできませんのでご了承のうえご注文下さい。